ビジネスや個人の目標達成において、モチベーションの維持と向上は欠かせない要素です。
人は大きく分けて2つの動機から行動します。一つは「何かを得ようとする欲求」、もう一つは「失いたくないという恐怖」です。
この二つの動機のどちらがより強力なモチベーションとなるかを考えると、実は「失うことへの恐怖」が多くの場合、より強いモチベーションを生み出し、持続力のある行動につながることが分かります。
いくつかの例を交えながら、私なりの考えでこの「モチベーション格差」について掘り下げてみます。
資産とモチベーション
まず、資産を持つ人と持たない人の例を考えてみましょう。多くの資産を持っている人は、これを失いたくないという強い感情を抱きます。彼らはその資産を守るために、節約や投資、資産運用に関する知識を積極的に習得し、実践することに多くの時間と労力を費やします。
一方、資産を持っていない人は、これから資産を得ようとする欲求を持っていますが、そのモチベーションは資産を持っている人に比べて相対的に低いことが多いのです。
なぜなら、まだ失うものがない状態では、行動に伴うプレッシャーや緊張感が少ないため、長期的な努力を続けるのが難しいからです。
例えば、ある程度の資産を持つ人は、その資産が減少したり、リスクにさらされたりすることに対して非常に敏感になります。
資産を失う可能性を避けるために、さらなる知識を積極的に求め、リスクヘッジのための行動を続ける姿勢が見られます。
これに対して、まだ資産を持っていない人は、得ることに対して興味を示しますが、切実さが欠けているため、行動の一貫性や持続力が弱くなりがちです。
ビジネスにおけるモチベーション
ビジネスの場でも同様の現象が見られます。
高い売上を誇る会社や商店は、現状の売上を維持するために多大な努力を払います。
なぜなら、売上を失うことはビジネスの継続に直結する重大なリスクだからです。
この「失うことへの恐怖」が、日々の努力や改善を促す強力なモチベーションとなり、彼らは新しい商品やサービスの開発、顧客満足度向上のための施策に積極的に取り組むのです。
一方で、売上が少ない会社や新興企業は、これから売上を増やそうとする欲求を持っていますが、その動機は現状のビジネスを維持するためのプレッシャーに比べると相対的に弱くなることが多いです。
売上が少ない状態では、失うものが少ないため、緊張感や危機感が低くなり、日々の努力が持続しにくいのです。
結果として、売上が高い会社は常に維持と成長のための努力を惜しまず、その姿勢がさらなる成功を呼び込むサイクルが生まれる一方で、売上が少ない会社は成長のきっかけをつかみにくくなります。
個人の例:男性の脱毛
個人の生活においても、同様の現象が見られます。例えば、男性の脱毛に関する問題です。
まだ髪の毛がフサフサな人は、将来の脱毛を恐れて早い段階でケアに取り組むことが多いです。
彼らは髪を失うことに対して強い恐怖感を抱き、シャンプーや育毛剤を使ったり、生活習慣の改善に努めたりします。
これに対して、すでに脱毛が進行してしまっている人は、失うものが少ないため、育毛や脱毛予防に対するモチベーションが低くなりがちです。
結果として、まだフサフサの状態の人の方が、すでに禿げてしまった人よりも積極的に努力しているケースが多いのです。
モチベーション格差のビジネスへの応用
これらの例から分かるように、「失いたくない」という恐怖が強力なモチベーションを生み出し、持続的な努力につながる傾向があります。
このモチベーション格差は、ビジネスにおいても重要な教訓を与えてくれます。
特に、起業や新しいプロジェクトのスタート時において、早い段階で小さな成功や目標を達成し、その成功を失いたくないという感情を抱くことが、後の持続的な努力につながりやすくなります。
スタート時に思い切って努力し、一定の成果を上げることで、その成果を守るためのモチベーションが自然と生まれ、結果としてビジネスの成長を加速させることができるのです。
一方で、スタート時に目標を達成できず、得ることへの欲求のみで動いている場合は、モチベーションの維持が難しく、長期的な努力が途切れがちになります。ビジネスにおいても、「最初の成功が次の成功を呼ぶ」という原則が存在し、早期の成果が後の努力の原動力になることが多いのです。
まとめ
「得ようとする欲求」と「失いたくないという恐怖」のどちらがモチベーションを高めるかという問いに対して、一般的には「失いたくない恐怖」の方がより強力で、持続的な行動を促す傾向があります。
資産や売上、個人的な目標など、どんな分野においても、失うリスクがあるときに人はより強い動機を持ち、努力し続けることができるのです。
このため、ビジネスや個人の目標達成において、早い段階での成功や成果を積み上げ、それを守るという心構えを持つことが、持続的な成長のカギとなります。
スタート時には思いっきり努力し、小さな成功を早めに掴むことが、後の成功への道を切り開く最も確実な方法と言えるでしょう。